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白い花

戦後七十年、私はある女性の父親の生涯に思いを馳せた。

──その父親は御前会議にまで列席したエリート軍人だったが、戦後は公職を辞して故郷に帰り、戦場に散った兵士たちを弔い、慚愧の涙を流す日々が続いたという。(その転身は、私にはいたましくも尊いものに思われた。)

その後、広島で被曝したときの後遺症で、父親は娘の晴れ姿を見ることもなくひっそりと逝去した。

──道端に目をやると、夏の終わりの弱い陽射しの中で、白い花が二輪咲いていた。


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